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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)9781号 判決 1998年6月09日

原告

平田一義こと尹一義

被告

宮崎誠司

ほか一名

主文

一  被告宮崎誠司は、原告に対し、金四七九万二一四二円及び内金四三九万二一四二円に対する平成七年九月三〇日から、内金四〇万円に対する平成九年一〇月二五日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告株式会社昭和ボーリング工事は、原告に対し、金四七九万二一四二円及び内金四三九万二一四二円に対する平成七年九月三〇日から、内金四〇万円に対する平成九年一〇月二四日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

五  この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告宮崎誠司は、原告に対し、金一五七八万六七八〇円及び内金一四三五万一七八〇円に対する平成七年九月三〇日から内金一四三万五〇〇〇円に対する平成九年一〇月二五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告株式会社昭和ボーリング工事は、原告に対し、金一五七八万六七八〇円及び内金一四三五万一七八〇円に対する平成七年九月三〇日から内金一四三万五〇〇〇円に対する平成九年一〇月二四日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告運転の普通乗用自動車と被告宮崎誠司運転(被告株式会社昭和ボーリング工事所有)の普通乗用自動車とが正面衝突した事故につき、原告が、被告宮崎誠司に対しては、民法七〇九条に基づき、被告株式会社昭和ボーリング工事に対しては、自賠法三条・民法七一五条に基づき、損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実等(証拠により比較的容易に認められる事実を含む)

1  事故の発生

左記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

日時 平成七年九月三〇日午後一〇時〇分頃

場所 大阪府四条畷市逢阪六五四番地先路上(以下「本件事故現場」という。)

事故車両一 普通乗用自動車(大阪三五て三三一)(以下「被告車両」という。)

右運転者 被告宮崎誠司(以下「被告宮崎」という。)

右所有者 被告株式会社昭和ボーリング工事(以下「被告会社」という。)

事故車両二 普通乗用自動車(大阪七九も四六二一)(以下「原告車両」という。)

右運転者 原告

態様 被告車両がカーブでスリップし、対向車線にはみ出し、原告車両に正面衝突した。

2  責任原因

(一) 被告宮崎

被告宮崎には、自車線を保持して進行すべき義務等に違反した過失がある。

(二) 被告会社

(1) 被告会社は、被告車両の保有者であり、自己のために同車両を運行の用に供していた者である。

(2) 被告宮崎は、被告会社の従業員であり、本件事故当時、被告会社の業務の執行中であった。

3  傷病の内容及び治療経過

(一) 傷病名

原告は、本件事故により、歯槽骨骨折、ショック肺、口唇挫創の傷害を負った。

(二) 治療状況

原告は、左記のとおり入通院し、治療を受けた(入通院の期間につき、<8>を除き、争いがない。<8>の期間及び病院における処置内容につき、甲四ないし六、原告本人、弁論の全趣旨)。

<1>平成七年九月三〇日から同年一〇月六日まで、畷生会脳神経外科病院に入院。この間に口唇裂傷部の処置を受けた。

<2>平成七年一〇月九日、内田クリニックに通院。

<3>平成七年一〇月六日から同年一一月一日まで、友紘会総合病院歯科に入院。<3>、<4>及び<7>の期間を通じ、骨折及び歯牙の処置を受けた。

<4>平成七年一一月五日から平成八年一一月一一日まで、友紘会総合病院歯科に通院(実通院日数二四日)。

<5>平成七年一一月一五日、星ケ丘年金病院に通院。

<6>平成七年一一月二〇日から同年一二月一六日まで、南皮膚科に通院(実通院日数四日)。

<7>平成八年六月五日から同月一一日まで、友紘会総合病院歯科に入院。

<8>平成八年一一月五日から同月二六日まで、大阪大学附属病院に通院(実通院日数二日)。口唇裂傷部に搬痕が残っていたため、形成治療を受けた。

<9>平成八年一一月一二日から同月三〇日まで、新世病院に通院(実通院日数三日)。口唇部の形成の手術を受けた。

4  損害の填補

被告は、原告に対し、本件事故に関して合計二三六万七六一七円を支払った。

二  争点

本件の争点は、本件事故によって原告に生じた損害額である。

(原告の主張)

(一) 治療費

未払分 三万三四八〇円

既払分 二〇六万七六一七円

(二) 付添看護料 一〇万五〇〇〇円

(三) 入院雑費 五万三三〇〇円

(四) 交通費 七万円

(五) 入通院慰藉料 一四九万円

(六) 後遺障害逸失利益 八四二万円

(1) 後遺障害の内容

左上第一歯から第四歯間で欠損、右上第一歯破折

左下第一、第二歯脱臼、右下第一歯脱臼

以上を後遺障害等級一三級四号として評価

(2) 労働能力喪失

原告は鉄工所勤務の工員として稼働していたため、歯牙欠損により力仕事が困難となり、労働能力が九パーセント喪失した。

(3) 基礎収入 四一四万円(年収)

(4) 期間 四三年

(七) 後遺障害慰藉料 一五〇万円

(八) 将来の義歯費用 一一〇万円

(九) 休業損害 一五八万円

(一〇) 弁護士費用 一四三万五〇〇〇円

(被告の主張)

治療費(未払分)のうち、一万六七四〇円は認めるが、その余は不知。

その他の損害項目については、不知ないし争う。

なお、原告の後遺障害については、後遺障害等級一三級四号に該当するとの事前認定がなされているが、後遺障害の内容からみて、原告の労働能力は低下しておらず、減収も生じていないから、逸失利益は基本的には存しないというべきである。

第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む)

一  争点について(原告の損害額)

1  損害額(損害の填補分控除前)

(一) 治療費 二〇八万四三五七円

原告が、治療費として、被告支払分二〇六万七六一七円、未払分一万六七四〇円を要したことは当事者間に争いはない。右金額を超える治療費があることを認めるに足りる証拠はない。

(二) 付添看護料 一万五〇〇〇円

原告に付添看護を要したとの医師の診断はないが、原告が本件事故により、ショック肺を起こしたこと、そのため、三日間重篤状態であったこと(甲二、原告本人、弁論の全趣旨)にかんがみると、平成七年九月三〇日から同年一〇月二日までの三日間近親者による付添看護を要したと認められ、一日あたり五〇〇〇円として、合計一万五〇〇〇円の付添看護料を要したと認められる。他に、本件事故と相当因果関係にある付添看護料を認めるに足りる証拠はない。

(三) 入院雑費 五万三三〇〇円

原告は、合計四一日間入院したから(争いのない事実)、右期間の入院雑費として、一日あたり一三〇〇円として合計五万三三〇〇円を要したと認められる。

(四) 交通費 四万七二〇〇円

原告が通院の際に要した交通費について的確な証拠はないが、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、少なくとも友紘会総合病院に通院の際の交通費として片道八〇〇円、それ以外の病院に通院する際の交通費として片道四〇〇円を要したと認められる。友紘会総合病院への通院日数は二四日、その他の病院への通院日数は一一日であるから(争いのない事実)、通院交通費の合計は、四万七二〇〇円となる。

(五) 入通院慰藉料 一〇〇万円

原告の被った傷害の程度、治療状況等の諸事情を考慮すると、右慰藉料は一〇〇万円が相当である。

(六) 後遺障害逸失利益 認められない。

証拠(甲四、六、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。

原告は、本件事故の結果、左上第一歯から第四歯間で欠損、右上第一歯破折、左下第一、第二歯脱臼、右下第一歯脱臼の後遺障害が残った。自算会調査事務所は、原告の後遺障害につき、自賠責保険に用いられる後遺障害別等級表一三級四号に該当すると判断した。

原告(昭和四七年一〇月二八日生)は、本件事故当時、弘容製作所というディスプレー製品を製作する会社に勤務していた。弘容製作所は、代表者の外、原告を入れて三人の従業員がいた。原告の同僚に退職者は四人いるが、そのうち一人は独立して同様の仕事を行っているが、他の三人はその後どのような仕事をしているかは不明である。原告は、本件事故後、平成八年一月に弘容製作所に復帰し、その後、平成一〇年一月までの約二年間、そこで就労し、その間、本件事故前とほぼ同額の給与(月額二七ないし二八万円程度)を得ていた。平成一〇年一月二四日からは、父親の経営する焼肉店を手伝い始めた。

以上のとおり、認められる。

原告は、弘容製作所で技術やノウハウを身につけてから独立しようと考えていたが、歯牙欠損により重い物の運搬等の力仕事が困難となり、将来独立して自分の工場を持つことが無理であると思い、弘容製作所を辞めたのであり、後遺障害により労働能力が九パーセント喪失したと主張するが、将来独立して自分の工場を持ち、ディスプレー製品を製作する仕事を継続したであろうと認めるに足りる証拠はない上、右後遺障害の内容及び弘容製作所においても本件事故の前後でほほ同額の給与を得ていたことにかんがみると、右後遺障害を逸失利益算定の局面で考慮して原告の労働能力が喪失したと認めるには不十分である。

したがって、後遺障害逸失利益を認めることはできない。

(七) 後遺障害慰藉料 二〇〇万円

原告の右後遺障害の内容及び程度を考慮すると、右慰藉料は、二〇〇万円が相当である(原告の主張額は一五〇万円であるが、これに五〇万円を加算する。)。

(八) 将来の義歯費用 二八万一四〇二円

原告の義歯人工歯については、摩耗のため、一〇ないし一五年に一度修理を要し、一回に約二二万円を要する(甲三)。今後、原告は、少なくとも一五ごとに計三回は修理を要すると認められるから、年五パーセントのホフマン式によって中間利息を控除すると、次の計算式のとおり、義歯修理費用を要することになる。将来、右以上の義歯費用が要すると認めるに足りる証拠はない。

(計算式) 220,000×(0.5714+0.4+0.3077)=281,402

(九) 休業損害 一二七万八五〇〇円

原告が弘容製作所に復帰したのは、平成八年一月であること、平成八年一月以降、入通院に要した時間に相当する分が給与から減額されたこと、病院の通院にはほぼ半日を要したこと(なお、友紘会総合病院の通院には一日を要することもあった旨の原告本人の供述があるが、一日を要した日数は明確ではない。)、原告の給与は少なくとも平均して月額二七万円程度であったこと(以上、原告本人)、平成八年一月以降の原告の入通院日数は、入院七日、通院一九日であること、弘容製作所からボーナス三二万円を減額した旨の証明書が作成されていること(以上、甲五)からすると、原告は、平成七年一〇月から同年一二月まで三か月間の給与、平成八年一月以降一六・五日分の給与(入院七日は全日、通院一九日は各半日として計算)及びボーナス三二万円の損害を被ったと認められる。

(計算式) 270,000×3+270,000×16.5/30+320,000=1,278,500

2  損害額(損害の填補分控除後) 四三九万二一四二円

以上掲げた原告の損害額の合計は、六七五万九七五九円であるところ、被告から原告に対し、本件事故に関して合計二三六万七六一七円が支払われているから(前記のとおり)、これを六七五万九七五九円から控除すると、四三九万二一四二円となる。

3  弁護士費用 四〇万円

本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告の弁護士費用は四〇万円をもって相当と認められる。なお、原告は、弁護士費用については、被告宮崎につき、平成九年一〇月二五日、被告会社につき、平成九年一〇月二四日(いずれも本件不法行為日以降の日)から遅延損害金の支払を求めている。

二  結論

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口浩司)

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